
矯正治療といえば、歯の表面に金属製の器具をつけているイメージがありますよね。
表面に器具をつけるのはマルチブラケット法とよばれる方法で一般的によく普及しています。
この方法だと器具が目立ちますし「見た目的に抵抗がある...」と思っている人も多いのではないでしょうか。
しかし歯の表面ではなく、裏面に器具をつける歯科矯正があるのはご存知ですか?
この記事では歯の裏側から行う歯科矯正について、仕組みやメリット、費用などを紹介していきます。
歯科矯正を検討している人はぜひ参考にしてください。
Contents
歯の裏側の矯正とは
歯の裏側の矯正は、正式には舌側矯正治療とよばれる歯の矯正治療です。
歯の矯正治療に使うブラケットやワイヤーなどの矯正装置を歯の裏側に装着するのが特徴です。
矯正治療には、いろいろな方法がありますが、中でもドイツで開発されたインコグニートとよばれる方法が有名です。
歯の裏側の矯正の仕組み
歯の裏側にブラケットという金属器機を装着し、ワイヤーを通します。
ブラケットとワイヤーを組み合わせるという点で、従来から行われている表側からの矯正治療とメカニズムは同じです。
ただし、歯の形は、歯の表と裏では全く異なるので、使用されるブラケットは舌側矯正治療専用のものとなります。
インコグニートの特徴
前述したインコグニートでは、装着するブラケットは一人一人歯の形に合わせて、ブラケットをオーダーメイドで作ります。
しかも、ブラケットだけでなく、使用するワイヤーも、専用の機械で曲げたものを使用します。
ブラケットが歯にぴったり合うことによる歯磨きや発音しやすさというメリットがあります。
歯の裏側の矯正のメリット
歯の裏側の矯正治療には大きく以下3点のメリットがあります。
- 目立ちにくい
- 出っ歯を治しやすい
- むし歯になりにくい
それぞれ解説していきます。
目立ちにくい
歯の裏側に矯正装置を装着しますので、目立ちにくいです。
通常の歯科矯正の場合は歯の全面に器具がつくので、抵抗がある人も多いです。
審美性を気にする人には大きなメリットです。
出っ歯を治しやすい
歯の裏側矯正治療には、出っ歯を治しやすいというメリットもあります。
歯の表側からの矯正治療と比べると、歯を動かす時のメカニズムに違いがあります。
この違いにより、裏側からの治療の方が、出っ歯を治しやすくなっています。
歯の表側からの矯正治療と同じく、できない症例はほとんどありません。
むし歯になりにくい
さらに、むし歯になりにくい特徴もあります。
歯の表層は、エナメル質とよばれる骨よりも硬い物質でできています。このエナメル質は、歯の表と裏側で同じ厚みではありません。
歯の裏側のエナメル質の方が、表側よりも分厚くなっていて、厚い方がむし歯菌が作り出す酸に対して、より強くなります。
さらに、下顎の前歯の裏側は唾液の出口があり、唾液の恩恵を最も受けやすいところです。
唾液には、むし歯の原因菌の働きを抑えたり、歯の表面の汚れを洗い流したり、初期のむし歯である脱灰という状態になった時に自然修復する働きなどがあります。
そのため、歯の裏側の矯正治療の方が、むし歯になりにくい傾向があるのです。
歯の裏側の矯正の治療期間
歯の裏側の矯正治療では、2年前後の期間がかかると言われています。一般的な矯正治療の期間が1年半〜2年前後と言われているので、比較すると短期間での治療が可能です。
なお、インコグニートでは、歯にぴったりのブラケットをオーダーメイドで作りますので、ブラケットを装着するときの誤差がほとんど生じず、正確にブラケットをつけることができます。
そのため、より効果的で正確な治療効果が期待できるために、治療期間は1〜2年ほどと言われています。
ただし、難症例ですともう少し余分な期間が必要となることもありますので、矯正歯科医に相談されることをおすすめします。
歯の裏側の矯正の痛み
歯の裏側の矯正治療では、舌にダイレクトに矯正装置が接触しますから、慣れるまでの間、痛みが生じます。
歯を動かす時の痛み
矯正治療が始まり、歯が動き始めると、痛みを感じるようになります。これは、歯の表側からの矯正治療も同じです。
1週間もしないうちに慣れてくるのが一般的ですが、調整の度に繰り返し痛くなります。
食事中の痛み
食事中に舌はいろいろな役割を担っています。
食べ物を歯の上に置いたり、飲み込む為に喉に向かって送り込んだりするのは、すべて舌の役割なのです。
しかし、裏側の矯正をしていると、食事のたびに舌が矯正装置に当たり痛くなります。結果、食事が苦痛になることがあります。
話す時の痛み
会話をするときもやはり舌を動かしますから、痛みによって話しにくくなったり、はっきり話せなくなったりします。
特に、サ行やタ行、ラ行の発音がしにくくなるので、不明瞭になります。
裏側矯正の痛みはすぐに慣れる?
「歯の裏側の矯正治療をやらなければよかった」と思う方の多くは、痛みが原因であることが多いです。
数週間もすれば治療には慣れてきますが、その頃には次の調整段階になるので、痛み自体がなくなることはありません。
また、ガムやキャラメルは、治療が終了するまで噛めないので注意しましょう。
歯の裏側の矯正の費用
歯の表側からの矯正治療と比べると、治療の難易度が高いため、費用も高くなります。
また、同じ舌側矯正治療でも、インコグニートの場合は、歯ひとつひとつにあったブラケットをオーダーメイドで作ります。しかも、製作はドイツで行われていることもあり、さらに費用は高額になります。
インコグニートでは、100〜150万円かかることが多いです。
表側からの矯正治療の費用が、50〜80万と言われています。
矯正治療の費用は高いと思われていますが、比べてみると、一般的な矯正治療を安いと感じさせるほどの費用の高さがわかります。
部分的な矯正であっても同じ
出っ歯の矯正、つまり前歯だけを治したい時であっても、矯正装置は全ての歯に装着しますので、費用は歯並び全体を治す時と同じです。
裏側矯正の支払方法について
費用の支払い方法については、治療の回数で割って分割払いにする、ブラケットの装着時に多めに支払い、その残りをワイヤーの交換時に支払うように分割するなど、それぞれの歯科医院で独自に設定しています。
費用を含めて、それぞれの歯科医院で相談してください。
まとめ
歯の裏側の矯正は、目立ちにくく、しかもむし歯にもなりにくいという大変優れた治療法です。
しかし、技術的に難しいこともあり、一般的な矯正治療と比べると費用が高くなります。
なるべく目立ちたくない、むし歯のリスクを減らしたいなど希望している方には、歯の裏側の矯正はおすすめです。
歯の裏側の矯正を考えている方は、一度支払い方法を含めて歯科医院で相談されるといいでしょう。
【 監修 】
田中和之
九段下スターデンタルクリニック院長
確かな技術・痛くない・待たせない・丁寧な説明“をポリシーに診療を行う九段下スターデンタルクリニックの院長。医療法人社団スタデン理事長も務める。
審美歯科歴17年以上の経験を有し、審美歯科の症例数は5000症例を超えている。