
ホワイトニングは、歯を漂白することで、白いきれいな歯にしてくれます。
削ることなく白くできるのがホワイトニングのメリットですが、すでにむし歯の治療を受けた歯に対しても、白くすることが出来るのでしょうか。
今回は、詰め物治療とホワイトニングの関係性を解説します。
歯が白くなる理由
ホワイトニングで歯が白くなるのは、ホワイトニングに用いる薬剤に理由があります。ホワイトニングでは、過酸化水素・過酸化尿素という薬を使います。
過酸化水素の歯を白くする原理
過酸化水素を歯に塗ると、分解されてフリーラジカルを作り出します。
この生み出されたフリーラジカルが歯の色素を分解することで、歯が漂白されて白くなるのです。
過酸化尿素が歯を白くする原理
過酸化尿素は、過酸化尿素として歯を白くしているのではありません。
過酸化尿素を歯に塗ると、歯の内部にしみ込みながら、過酸化水素に変化していきます。
そして、歯の内部で過酸化水素が歯を漂白して、歯を白くします。
ホワイトニングの作用の仕方
歯を白くするホワイトニングの作用を、健康な歯と詰め物にわけて解説します。
健康な歯へのホワイトニングの効果
健康な歯にホワイトニングを行なうとどうして白くなるのでしょうか。
歯の色は実は象牙質の色
歯は、象牙質とその表面を覆っているエナメル質でできています。
エナメル質は、骨よりも硬く、身体の中で最も硬いといっても過言ではない強さをもっている物質なのですが、その色は透明です。
つまり、歯の白い色は、エナメル質の内側にある象牙質の色なのです。象牙質の白色が透けて見えているわけですね。
歯の色が変わる理由
象牙質は、年とともに色が変化していきます。多くの場合、黄色味が強くなっていく傾向があります。
また、エナメル質に長い年月をかけて目では見えないような微細な傷が生じ、その傷からコーヒーや紅茶、ワインなどの飲食物の濃い色素がしみ込んでいき、歯の色を変化させていきます。
これらの色の変化は、表面に着色汚れがついたことが原因で起こっているのではなく、歯の内部から色が変化しているわけです。
健康な歯へのホワイトニングの効果
歯の内部に原因のある歯の色の変化に対しては、表面をいくらきれいに磨いても歯を白くすることはできません。
ホワイトニングは、過酸化水素や過酸化尿素の働きで、歯の表面や内部から色の変化の原因となっている色素を分解してくれますので、歯が白くなるのです。
詰め物へのホワイトニング効果
むし歯治療でしばしば行なわれる詰め物治療や被せものに対して、ホワイトニングはどのように作用するのでしょうか。
詰め物治療で多用されるコンポジットレジン
保険診療のむし歯治療では、コンポジットレジンという修復材料がよく用いられます。コンポジットレジンとは、歯の色に似た白い色をしたプラスチックのことです。
歯の色は千差万別なので、いろいろな色味のコンポジットレジンが作られています。
小さなむし歯の場合、コンポジットレジンを使えば、歯型をとる必要もなく、その日のうちにむし歯を削り、詰めて治せるので、たいへん便利です。
コンポジットレジンは被せものにも使われている
詰め物治療では対応しきれないほど大きいむし歯の治療では、被せものを作って治しています。いわゆる銀歯です。
しかし、前歯の治療に限っては、保険診療でも表側だけコンポジットレジンを貼付けて、白くした銀歯が使えます。
このタイプの被せものをコンポジットレジン前装冠といいます。
前歯に限られますが、白い被せものが保険診療で安く被せられるのが、利点です。
詰め物の色の変化
コンポジットレジンは、詰めた当初は、歯の色に合わせた白い色をしていますので、違和感はありません。しかし、年とともに白い色は黄色く変化していきます。
黄色く変化するのは、お口の中を流れている唾液や食べ物、飲み物などの影響を受けて化学変化を起こすことが原因と考えられています。
素材の改良によって、以前程黄色味が強くはなくなりましたが、現在でもやはり色の変化は避けられません。
したがって、詰めてから、もしくは被せてから年が経てば、詰め物もコンポジットレジン前装冠も黄色くなってきます。
詰め物へのホワイトニングの効果
ホワイトニングの薬剤である過酸化水素や過酸化尿素は、歯の表面や内部にしみ込んだ色素を分解して歯を白くします。
コンポジットレジンが黄色く変色してくるのは、色素がしみ込んで起こった現象ではないので、コンポジットレジンの色の変化に対するホワイトニングの効果は期待できません。
むし歯があるときはどうする?
ホワイトニングを受けたいけれど、むし歯がある場合どうすればいいのでしょうか。
詰め物治療でいいくらいのむし歯の場合
詰め物治療で治せそうな大きさのむし歯、つまりむし歯が小さいときでも、ホワイトニングの前に、むし歯治療を終わらせておかなければなりません。
健康な歯でも知覚過敏という違和感を感じることがあるわけで、むし歯にホワイトニングをすることで、強い痛みを誘発する可能性があるからです。
気になるのが、コンポジットレジンの色だと思いますが、基本的には詰め物治療をするときの歯の色、もしくは1〜2段階くらい明るい色みで合わせたりします。最終的に、どれくらいの白さになるのか、してみないとわからないからです。
ですから、ホワイトニングが終わってから、改めて詰め直すことも珍しくありません。
被せないといけないほどのむし歯の場合
大きなむし歯の場合もむし歯の治療が優先です。
むし歯は、大きくなると逆に痛みを感じなくなることもあります。
だからと言って、ホワイトニングを優先して、むし歯という病気の治療を後回しにすると、むし歯がさらに進行して、もしかしたら抜歯しなくてはならなくなるかもしれません。ですから、まずはむし歯の治療が優先となります。
コンポジットレジン前装冠の色は、やはり被せる段階の隣の歯の色に合わせることになります。そして、ホワイトニングが終わった後に、セラミック製被せものに置き換えるのがいいでしょう。
ホワイトニングの後に歯の色の差が気になるときにはどうすればいいの?
もし、ホワイトニングが終わった後に、詰め物や被せものの色と歯の色がミスマッチを起こしていた場合は、どうすればいいのでしょうか。
コンポジットレジンを詰めていた歯の場合
前述したように、コンポジットレジンを詰めた歯にホワイトニングをしても、コンポジットレジンの部分の色は白くなりません。
ですので、コンポジットレジン以外の部分だけ白くなりますから、1本の歯に色のムラが生じることになります。
このときは、白くなった部分に合わせるように、コンポジットレジンを取り除いて新しく、より白い色をしたコンポジットレジンで詰め直す必要があります。
コンポジットレジン前装冠で治していた場合
詰め物ではなく、コンポジットレジン前装冠でむし歯を治している場合があります。
この場合は、1本の歯の中に色ムラが生じるのではなく、隣の健康な歯と比べて色が黄色味がかった色の差として現れてきます。
コンポジットレジン前装冠の構造上、被せもののコンポジットレジンの部分だけを取り外して、新しいコンポジットレジンに交換するのは技術的に困難です。
そこで、被せものそのものを取外し、色の変化が起こらないセラミック製の被せものなどに交換して、他の歯と色を合わせなければなりません。
まとめ
ホワイトニングは、歯を削ることなく薬剤の働きで漂白して白くする治療法です。
しかし、ホワイトニングは歯の表面や内部にしみついた色素を分解することで、歯を白くします。
その働きから、詰め物や被せもの、つまり人工物に歯を白くする作用は起こりません。
もし、ホワイトニングを受けた後に詰め物や被せものと白色の差が気になるようでしたら、詰め物や被せものを取り除き、新しいものと置き換える治療が必要となります。