虫歯や歯周病で歯を抜いた後に残っている歯を守るためには、インプラント治療が1番いい治療方法と考えられています。
しかし、インプラント治療は保険治療の適応ではないので、高額治療になります。
そのため、インプラント治療がしたくても、そう簡単にはできないです。
今回はインプラント治療がどのようなもので、かかる費用や期間、メリット、デメリットなどについて説明します。
Contents
インプラント治療とは?
インプラント治療とは、なんらかの原因で失われた歯の場所に、歯の代わりとなるチタンで出来た人工的な歯(人工歯根)を骨に植えこみ、再び歯の機能を回復させるという治療方法です。
インプラントの構造
インプラントは3つの構造からなります。
・インプラント体(フィクスチャー):歯でいう根(歯根)の部分に相当します。材質はチタンで出来ており、チタンが骨と結合するという性質を応用しています。
・土台(アバットメント):被せ物をするための部分です。インプラントの位置や治療方針によっては、土台ではなく直接インプラント体にねじ(スクリュー)で被せ物と固定することもあります。
・被せ物(上部構造):最終的な被せ物です。インプラントに被せ物を被せることにより、元々あった歯としての機能を回復させる目的や、見た目を回復させる目的があります。
インプラントの治療期間
インプラントのメーカーや骨の状態(骨の形、量、幅など)によって治療期間がことなります。インプラント体が骨と結合するまで、下顎では1~3か月(平均して3か月)、上顎では1~6か月(平均して3か月)ほどかかります。これは、下顎の骨(皮質骨)が硬く、上顎の骨(海綿骨)は柔らかいという特徴の違いによるものです。
インプラントの費用(税抜)
・インプラントの術式や骨の状態などによってことなります。
・診断・検査・レントゲン代:無料~¥30,000
・CT代:無料~¥20,000
・インプラント手術代(インプラント体も含む):¥100,000~¥300,000
・土台(アバットメント):¥20,000~¥50,000(チタン合金は安く、ジルコニアの場合高いです)
・被せ物(上部構造):¥50,000~¥200,000(金属では安く、セラミックを使った場合は高くなります。)
・骨を増やす手術(人工的な骨や骨の移植代も含む):¥50,000~¥200,000(特殊な骨を増やす手術をする場合は高額になります。)
前歯のインプラント
前歯の歯の治療で重要になることは、いかに自然できれいであることです。歯としての機能も重要ですが、前歯の治療は、より見た目がきれいで自然であることが望ましいです。そのため、前歯のインプラント治療では、見た目をきれいにするために、歯茎が陥没したりしないように、他の場所から歯茎を移植したり、骨を移植したりする必要がある場合があります。そのため、通常のインプラント治療よりも高額になる場合が多いです。
奥歯のインプラント
奥歯のインプラントは前歯に比べて、見えづらい場所にあるため、前歯ほど見た目は重要視されませんが、最近では見た目も重要視する傾向にあります。しかしながら、奥歯はものを噛むことにおいて大切なので、噛むことを回復させるということが最も大切な事になります。
総インプラント
何本かの歯が残って、将来的に何らかのトラブルが予測される場合、あらかじめ全ての歯を抜いて、全てインプラントを植えてしまうという治療方法もあります。例えば、オールオン4というインプラント治療があります。4本のインプラント(6本の場合もあります)で片側の顎の噛み合わせを回復させるという方法です。即日で噛めるという利点もありますが、高額な治療費と自分での清掃の難しさがあります。
インプラントのメリット
インプラント治療をすることによって様々なメリットがあります。
・失った歯が戻ってくる。
失った原因は様々でしょうが、無くなった歯が戻ってきます。入れ歯やブリッジのような異物ではなく、ほぼ元々あったような歯と同じような歯として。
・他の歯に負担がかからない。
入れ歯やブリッジでは、失った歯の隣の歯などに、失った歯の負担がかかります。しかも、他の歯を削ることはほとんどありません。そのため、将来的になんらかのトラブルが生じることがあります。とくに多いのが歯の破折です。
・顎の骨がやせない
入れ歯やブリッジでは、失った歯の負担が骨にかかるために、骨が痩せて歯周病が進行しやすくなったり、作った入れ歯に不具合が生じやすくなりますが、インプラントではそのようなトラブルを回避できます。
・ほかのどの治療よりもしっかり噛むことができる。
健全な歯の噛み合わせが100だとしたら、インプラントでは80~90、ブリッジでは50~70、入れ歯では20~40となります。ほぼ、健全であった状態と同じくらいの噛み応えを再現してくれます。
・医療費控除が使える
インプラント治療は高額な治療になります。そのため、確定申告時に医療費控除を申請すれば収入に応じてお金が戻ってきます。
・芸能人には最適な治療法
失った歯を入れ歯やブリッジよりも自然に回復してくれるため、常に様々な人に見られている芸能人の治療に最適です。バナナマンの日村さんがインプラント治療をしていることで有名です。
インプラントのデメリット
インプラント治療はメリットがある反面、残念ながらいくつかのデメリットもあります。
・高い
インプラント治療は、保険治療の適応ではないため自費治療になります。インプラント治療こそ現代では有名な治療法の1つなっていますが、高度な技術と知識が必要となるため、高額な治療費がかかります。
・痛い
ほとんどの症例で、歯茎を切って広げて骨に穴を開けてインプラント植え込む、外科処置であるため、麻酔をする必要があり、さらに麻酔が切れてから痛みが出る可能性があります。
・掃除が大変
特殊な構造であるため、通常の歯と比べると、インプラントと歯茎に若干のくぼみやギャップが生じます。そのため、普通の歯磨きだと汚れの取り残しが生じてしまう可能性があります。
インプラントの怖い話
現在のインプラント治療はほぼ100%の治療成功であるといわれていますが、それでもトラブルが生じてしまうことがあります。
・出血死
インプラント治療は外科手術であるため、口の中の血管や神経に気を付けて手術する必要があります。しかし、ごくまれにレントゲン上に移り込んでこない血管が存在し、インプラント治療中にドリルで損傷して、出血が止まらず死亡してしまうことがあります。但し、本当にごくまれな症例です。
・麻痺
下顎の奥歯の下の方に、「下顎管」という神経と血管が通った大きな管があります。骨が柔らかい場合、ドリルが一気に進んでしまい、下顎管を損傷して、唇に感覚が無くなってしまう症状、「麻痺」が生じてしまうことがあります。麻痺はインプラントを取り除いて回復することもありますが、傷つけられた神経はほとんどの場合回復することが非常に困難です。
まとめ
歯を失った後を補う治療法として、インプラント治療は非常に優れた治療法です。インプラント治療を成功させるためには、信頼できる技術と知識と、日々研鑽する姿勢を持ったドクターによる、十分な検査・診断のもとに分析された治療方針によって、自分自身が納得して気持ちよく治療が行えることが重要になります。